昔の家の話。

 

 

壊れたドア

穴の開いた壁

拳の跡

汚れた換気扇

かび臭い

凹んだ床

虫ばっかり出る

何度掃除しても汚れるトイレ

壊れたシャワー

ドラえもんのシール貼られたガラス

真っ暗な寝室

割れてるままの窓ガラス

家に似合わないでっかい食器棚

ペットダメなのに飼ってた

何度も通報された

坂道ばっかり

干すのだるくて毎晩コインランドリーで乾かした

 

それでも好きだった。

あの家が居心地が良かった。

大好きな布団の匂いで真っ暗な部屋で昼寝するのが大好きだった。

インコがずっと鳴いてるなにそれさえも慣れて

て気にも留めなかった。

買ってたハムスターは夜中になるとずっとカタカタ動いてたけど全然気にならなかった。

 

子供を寝かしつけた後に真っ暗な部屋で換気扇の電気だけつけて換気扇の下で飲むお酒が好きだった。

 

流星群の時は駐車場で寝そべって流れ星をずっと見てるのが好きだった。

 

塗装工事で足場が立った時勝手に足場に登って屋根より高い位置で飲むお酒はすごく美味しかった。

 

部屋から見えるすっごい小さな範囲の夜景がお気に入りだった。

 

帰ってきたときのあの自分の家の匂いが好きだった。

 

 

 

今の家は全部が綺麗で真っ白で物も何もなくて浴室乾燥機も付いてるしトイレも綺麗でいい匂いの芳香剤の香りがするしベッドも2個あるから余裕で寝れる。

 

それでもあのアパートが大好きだった。

退院してアパートの中見てみたらもう何もなくなってて悲しくてでも何もないのに電気しかつかないのにその何もない部屋で私は携帯と充電器だけ持って一晩過ごした。ホテルにいるより落ち着いた。

 

 

戻りたい。

思い出がいっぱい詰まってた。

4年間住んだアパートを、今、凄くいい家で、

戻りたいって考えてる。

 

もう戻れないのにね。